教育学としての基本テーマ
多様な学び手の経験を手がかりに、「何のための学校教育か」をカリキュラムと評価から捉え直します

ことばや文化の多様な背景をもつ学び手(例:外国につながる子どもなど)を手がかりに、教育学の基本問題である「教育の目的」「カリキュラム」「評価」を捉え直しています。近年は「何ができるようになったか」を到達的に示すことが求められがちですが、その中で学びが「標準への適応」や「不足の補い」として語られやすくなる点にも目を向け、人格の形成や関係、場への参加といった教育の価値を、カリキュラムと評価の視点で考え直します。
カリキュラムについては、教師が計画するものだけでなく、学び手が実際に経験し意味づける「学ばれたカリキュラム」に注目します。評価についても、点数や到達度の確認にとどまらず、人と人、人と社会をつなぐ営みとして捉え、「ナラティブ評価」などの視点から、対話を通して学びの価値や成長の意味を見出す評価のあり方を探究しています。
こうした問いを通して、「学校教育は何のためにあるのか」を、授業づくり・学校づくり・教師教育の課題へとつなげて考えています。
関連の主な文献
- バーラック, H., ニューマン, F. M., アダムス, E., アーチバルド, D. A., バージェス, D., レイヴン, J., ロンバーグ, T. A. , 渡部竜也,南浦涼介,岡田了祐,後藤賢次郎,堀田諭,星瑞希(訳)(2021)『真正の評価―テストと教育評価の新しい科学に向けて』(原著:Berlak, H., Newmann, F. M., Adams. E., Archbald, D. A., Burgess, T., Raven., J. Romberg, T. A. (1992). Toward a New Science of Educational Testing and Assessment. New York: The State University of New York Press.).
- 南浦涼介,石井英真,三代純平,中川祐治(2021)「実践の可視化と価値の物語化から見る『評価』概念の問い直し―日本語教育実践における実践共同体構築にもとづいて」『教育方法学研究』46, 85-95.
- 南浦涼介・柴田康弘(2015)「『実践者』と『研究者』の協働による学習観を探る実践研究─元生徒との『座談会』の場によってもたらされる可能性」『言語文化教育研究』第15巻, pp.97-117.
- 南浦涼介・柴田康弘(2013)「子どもたちの社会科学習観形成のために教師は何ができるか─ある中学校教師とその卒業生の事例からの探索的研究」『社会科研究』第79巻, pp.25-36.
研究の成果が本になりました!(2025年3月発行)
南浦涼介・三代純平・石井英真・中川祐治・佐藤慎司『人と社会をつなぐ評価―孤立化と分断を超えて』東信堂, 2025年
学校・授業づくりの視点
体制や制度が必ずしも整わない学校状況もふくめ
社会文化的な視点から文脈を捉え,授業と学校の価値を検討します。

教育方法学・教科教育学などの「一般的な教育」と、外国人児童生徒教育の「特別な教育」を往還しながら、学校と授業のあり方を考えています。
学校は、必ずしもいつも学校体制が十分に整えていくことは重要です。一方で、散在地域や小規模校、兼務・異動、限られた人的資源など、制度的に「整わない」ことが日常にあります。そうしたことをふまえ、授業づくりを個々の教師の技量だけに帰さず、子ども・教師・教材・言語・校内の役割分担・地域の資源が相互に影響し合う生態(エコロジー)として捉え、場にある資源を見立て直しながら学びを立ち上げる方法を探究します。
また、学級の関係性や学び手の経験、ことばのレパートリーに応じて、学びの意味を作り替えていく再解釈主義のカリキュラム・アプローチを大切にしています。活動・対話・協働・評価のしかたを、その場の文脈に合わせて組み替え、誰にとっても参加しやすい授業・学校のかたちを探究しています。
関連の主な文献
外国につながる子どもたちとその教育の視点
外国につながる子どもの教育を「制度整備」に閉じず
学校・地域に埋め込まれた営みとして捉え、包摂を支える条件を探究します。

外国につながる子どもの教育を、日本語指導のみの観点でとらえた「支援論・授業論」で見るのではなく、学校全体のとりくみとしてとらえる「カリキュラム」の視点を大切にしています。
また、実際の現場では、専門担当者が常にいるとは限らず、支援の継続性もゆらぎ、関係者も入れ替わります。そうした「整わない場」において、子どもの学びや参加が何によって支えられるのかを、子ども・教師・同級生・保護者・地域資源・言語環境・評価のしくみが織りなす生態学的な視点で読み解きます。
そうすることで、「人の配置」「不十分さの解消」という視点になりがちな外国につながる子どもたちの教育を、子どもたちが経験をふまえて学びに参加する可能性を模索しています。
関連の主な文献
教師教育・研修
教師が言葉や文化にかかわる力関係をふまえ、
子どもたちの資源を価値づけて実践する教師の力を育てようとしています。

とくに,ことばや文化の多様な背景をもつ学び手がいる学校で、教師が日々の授業や関わりの中で学びを支えられるように、教師教育(教員養成・現職研修)のあり方を探究しています。
ここで重視しているのは、特定のメソッドや支援に拠るのではなく、教師が教室の脈絡を読み取り、学び手のことば・文化や経験,そこにある力関係を見すえ,子どもたちの資源を,場に応じた形で授業や支援を組み替えられる力です。
「言語的感覚に優れた教師」と「文化的多様性に応じる教育」を重ねた視点・判断・実践を、どのように養成・研修で育てられるかを考えています。
また,同時に、支援体制が十分に整わない学校状況(専門家の不在や雇用条件の制限、散在地域、人的資源の不足、校内/外の連携の揺らぎなど)を前提に、学校を「生態(エコロジー)」として捉える教師教育を重視します。
教室の授業だけでなく、人と制度と場の関係性から教師がどのように学びを立ち上げ、包摂を実装していくのかを検討します。
関連の主な文献
- 南浦涼介(2025)「教師教育の実践研究とポリティクス—外国人児童生徒をめぐる〈教育〉装置の力学のジレンマから— 」『日本教師教育学会年報』34, 71-83.
- クマラヴァディヴェル, B., 南浦涼介,瀬尾匡輝,田嶋美砂子(訳)(2022)『言語教師教育論─境界なき時代の「知る,分析する,認識する,為す,見る」教師』(原著:Kumaravadivelu, B. (2011). Language Teacher Education For A Global Society: A Modular Model for Knowing , Analyzing, Doing, and Seeing. NY: Taylor & Francis Books.)
- 南浦涼介(2021)「自主的研究組織と社会科教師の多様性─あるいはSNSという対抗的公共圏からの学会へのまなざし」『社会科教育論叢』51, pp.63-72.
- 南浦涼介, 川口広美, 橋崎頼子, 北山夕華(2020)「多様性の視点を日本の学校教員養成に取り入れるための教師教育者の戦略─ペダゴジーと制度の観点から」『東京学芸大学紀要 人文社会科学系I』71, 109-126.
- KITAYAMA, Y., KAWAGUCHI, H., HASHIZAKI, Y. & MINAMIURA, R. (2020). Teacher Education for Social Justice : Case studies of Japanese and Norwegian educators, Annals of Educational Studies. 25, 51-62.
進行中のプロジェクト
広域オンライン多文化共生学習
探究×共生フレンドシップ
東広島市教育文化振興事業団との協働により、広島大学第一類初等教育学プログラムの学生たちが、東広島市内に在住する日本の子どもたちと外国につながる子どもたちとが一緒に探究学習を進めていく企画を行っています。
2024年度は東広島市立美術館、2025年度は合弁会社「ひとむすび」と「東広島まるひネット」と一緒に、子どもたちの探究企画を考え、実施しました。
研究方法論の整理と探究
実践をノウハウで終わらせず、研究として言語化し、共同研究として育てる方法を探究します。の教育を,カリキュラムと授業と評価の面から検討しています。
教育実践の研究方法論について翻訳書が出ました!(2024年5月発行)
ビースタ・G『よい教育研究とはなにか─流行と正統への批判的考察─』(明石書店, 2024年)

エビデンスに基づく教育から、価値に基づく教育へ
エビデンスの蓄積を通じて教育を改善し、説明責任を果たしていく。新自由主義体制下の教育界を覆うこの「正統的」研究観は本当に「知的な」姿勢といえるのか。デューイの伝統に連なる教育哲学者ガート・ビースタが、教育研究指南書が語ることの少ない教育研究の前提じたいをラディカルに問い直す。
教科教育学の実践研究について本を出しました!(2019年12月発行)
梅津正美(編)『協働・対話による社会科授業の創造─授業研究の意味と方法を問い直す─』(東信堂, 2019年)
これまで
- 1979 鳥取県米子生まれ→島根県松江→兵庫県宝塚→兵庫県猪名川
- 1998-02 滋賀大学教育学部 学校教育教員養成課程 社会科専修の中の考古学ゼミ(小笠原好彦研究室)。ほぼボート部の毎日
- 2002-03 ThailandのPhechabun Rajabhat Universityで日本語教師をする (日本語会話・ビジネス日本語・日本語入門など)
- 2003 帰国後兵庫県伊丹市で中学校の社会科臨時講師,契約切れのちフリーターをする
- 2003-04 再び渡タイ。ThailandのPhra Nakhon Si Ayutthaya Rajabhat Universityで日本語教師をする(日本語会話・日本語実習 など)
- 2004-05 滋賀県大津市の小中学校で外国人児童生徒の日本語指導の仕事をする
- 2005-10 広島大学大学院 教育学研究科 社会認識教育学講座で勉強する(小原友行研究室)
- 2006-10 大学院生と並行して,附属小学校,農業高校で社会科や図工,理科を教える仕事をする
- 2010-16 山口大学の教員。教育学部小学校教育コース(現・小学校教育総合選修)及び社会科教育選修 / 大学院 教育学研究科 社会科教育専攻の担当(教科教育法社会,教職概論,地域協働実践,中等公民教育論,教材開発演習など)
- 2016-23 東京学芸大学の教員。教育学部 国語教育選修 日本語教育コース / 大学院 教職大学院 教科領域指導 国語教育サブプログラムの担当(外国人児童生徒への日本語教育,日本語教育方法論,日本語政策論,異文化間教育,国語科研究 など)
- 2023- 広島大学の教員。教育学部第一類/大学院人間社会科学研究科 教育科学専攻 教師教育デザイン学プログラム 学習開発学領域の担当(外国人児童・生徒の教育,教育課程論,教育の社会・制度,地域教育実践,外国人児童・生徒の教育課程デザイン特論 など)






