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教育と研究の視点
多様なことばと文化を包摂するカリキュラム・授業構築に向けた教育方法研究―外国人児童生徒の十全な参加をめざして
言語的・文化的な背景をふまえた教育目的と内容構成の点から検討しています。
外国人児童生徒が国境を越えた移動を経験することで,本来持っているはずの移動前の社会や文化の視点と,移動後の社会や文化の視点を共に捉えていく実践のありかたを考えています。
この領域の最近の仕事
- 南浦涼介(2023)「『測りすぎ』の学校状況下の言語と文化の包摂とその危機─教育の幸福な展望と,教育学との有益な接続と」『第二言語としての日本語の習得研究』26, 108-127.
- 南浦涼介・本間祥子(2021)「年少者日本語教育における研究課題の変遷―学校と教育の再構築へ向けて」『日本語教育』179号. pp.62-76.
- 南浦涼介,中川祐治,三代純平,石井英真(2021)「民主化のエージェントとしての日本語教育─国家公認化の中で『国家と日本語』の結びつきを解きほぐせるか」『国家(教育学年報12)』(pp.283-304.)世織書房.
- 南浦涼介・清水良(2018)「「本当の自由とは何か」をめぐる小学生と留学生の対話―国語教育と日本語教育の教室が緩やかにつながる実践」『イマ×ココ』6, 42-53.
- 南浦涼介(2015)「即興の結び目が支援の場を創発するとき:分散地域に暮らす外国につながる子どもたちへの協働的実践の事例研究」『山口大学教育学部研究論叢』65-3, 333-342.
- 南浦涼介(2013)『外国人児童生徒のための社会科教育─文化と文化の間を能動的に生きる子どもを授業で育てるために』明石書店.
「社会とつながる評価」としてナラティブを用いる評価研究
「カリキュラム」の観点から考えると,入口は教育目標,過程は授業,出口は教育の評価に当たります。先の「授業のありかた」の研究が入口と過程の研究だとすると,カリキュラムの一貫性の観点から,出口としての評価の研究が必要です。
外国人児童生徒に対する評価と言えば,言語評価によるアセスメントが中心になりますが,言語評価そのものは,子どもたちを教え伸ばしていくという中で子どもたちを捉え,それを指導に生かしたりより大きな成長の手立てにつながっていくことには必ずしもつながらないことが多くあります。
また,具体的な評価も,数値や指標をもとにした評価ではなく,物語(ナラティブ)をもとにした評価の方法を評価原理に立ち返りながら提唱しています。
具体的にはパフォーマンス評価などが持っている教育評価・形成的評価の原点に一度立ち返り,パフォーマンスをルーブリックに落とし込むのではなく,社会に対してなされたパフォーマンスに対して,そのステイクホルダーがその価値を捉え受け止めていく中で,価値の対話が起こる=評価,という視点から研究を行っています。
これは,外国人児童生徒だけでなく,すべての子どもたちが持っている「必ずしも数値や指標では捉えられない学びやパフォーマンス」に価値を当てていくための研究でもあります。
この領域の最近の仕事
- 南浦涼介ほか(準備中)『人と社会をつなぐ教育評価―孤立化と分断を越える日本語教育実践からの問題提起』(仮).
- バーラック, H., ニューマン, F. M., アダムス, E., アーチバルド, D. A., バージェス, D., レイヴン, J., ロンバーグ, T. A. , 渡部竜也,南浦涼介,岡田了祐,後藤賢次郎,堀田諭,星瑞希(訳)(2021)『真正の評価―テストと教育評価の新しい科学に向けて』(原著:Berlak, H., Newmann, F. M., Adams. E., Archbald, D. A., Burgess, T., Raven., J. Romberg, T. A. (1992). Toward a New Science of Educational Testing and Assessment. New York: The State University of New York Press.).
- 南浦涼介,石井英真,三代純平,中川祐治(2021)「実践の可視化と価値の物語化から見る『評価』概念の問い直し―日本語教育実践における実践共同体構築にもとづいて」『教育方法学研究』46, 85-95.
- 三代純平,南浦涼介,佐藤慎司,中川祐治,石井英真(2020)「ナラティブによる評価─社会とつながる日本語教育」『アカデミック・ジャパニーズ・ジャーナル』12, 35-44.
「言語的に繊細な感覚をもった教師」を育てる教師教育の研究
上の2つの研究が直接的に子どもたちにかかわる教育そのものを対象にしていたことに対して,こちらは教師に対する働きかけの研究です。
「言語的に繊細な感覚を持った教師」(language responsible teachers)という名称をつけています。
日本の学校の多くの教師が「中流階級の日本人」であることが多いのですが,それは結果的に日本語をネイティブにしていることが多くあります(「ネイティブ」という言い方には近年注意が必要ですが)。しかし,そうしたことから,自分自身の用いる言語の複雑さや権威性に対して無自覚になってしまうこともよく見られます。
教師自身が用いる言語の特質を理解したり,学び手とのコミュニケーションとして用いることばのありかたやパワー,規範のありかたを考えなおしながら実践に取り組んでいける教師を「言語的に繊細な感覚を持った教師」と捉え,そのための教師教育のプログラム開発をめざしています。
この領域の最近の仕事
- クマラヴァディヴェル, B., 南浦涼介,瀬尾匡輝,田嶋美砂子(訳)(2022)『言語教師教育論─境界なき時代の「知る,分析する,認識する,為す,見る」教師』(原著:Kumaravadivelu, B. (2011). Language Teacher Education For A Global Society: A Modular Model for Knowing , Analyzing, Doing, and Seeing. NY: Taylor & Francis Books.)
- 南浦涼介(2021)「自主的研究組織と社会科教師の多様性─あるいはSNSという対抗的公共圏からの学会へのまなざし」『社会科教育論叢』51, pp.63-72.
- 南浦涼介, 川口広美, 橋崎頼子, 北山夕華(2020)「多様性の視点を日本の学校教員養成に取り入れるための教師教育者の戦略─ペダゴジーと制度の観点から」『東京学芸大学紀要 人文社会科学系I』71, 109-126.
- KITAYAMA, Y., KAWAGUCHI, H., HASHIZAKI, Y. & MINAMIURA, R. (2020). Teacher Education for Social Justice : Case studies of Japanese and Norwegian educators, Annals of Educational Studies. 25, 51-62.
- 橋崎頼子, 北山夕華, 川口広美, 南浦涼介(2017)「日本の教員養成課程の学生のナショナル・シティズンシップに対する意識 : 日本とノルウェーの7大学における調査を通して 」『国際理解教育』23, 13-22.
社会文化的アプローチを用いた,実践の研究方法論
学校現場では伝統的に「授業研究」を行ってきました。ただ,こうした「教師の研究」はいろいろな「お作法」に絡め取られ,当の教師たちにとって,「困ったもの」になりがちです。実践現場から研究を起こすとはどういうことか,どのような視点が必要なのかを検討しています。
この領域の最近の仕事
- 南浦涼介(2019)「第2章 協働・対話という視点によって授業の何が見えるか? ─論理実証アプローチと社会文化的アプローチ」梅津正美(編)『協働・対話による社会科授業の創造─授業研究の意味と方法を問い直す』東信堂.
- 南浦涼介(2019)「第5章 教師の経験から生まれる社会科教育観と授業研究スタイル─個別教師のライフストーリーから見る,理論と教育観の相互補完性と共同体」梅津正美(編)『協働・対話による社会科授業の創造─授業研究の意味と方法を問い直す』東信堂.
- 南浦涼介(2016)「『実践を研究として書く』ということの意味─実践の当事者として」『異文化間教育』43, 65-79.
(なお,これは同じ『異文化間教育』43号の特集,齋藤ひろみ・見世千賀子・佐藤郡衛・野山広・浜田麻里「異文化間教育学における実践・現場への接近法─現場へのまなざしを研究行動へ展開する」の特集の一部です。合わせてご覧くださると幸いです)
「学び手」の立場から捉えた学びの履歴としての達成カリキュラムと教師の成長の研究
「どのような目的で,何をどう教えたか」という教師の論理と,「この授業で何を身につけたのか」という学習者の受け止めはズレて当然です。ただ,そこをズレていると言うことで終わるのではなく,学習者は教科や領域の全体的意味をどう読み取り,自己のものにしていくのかの研究です。
とりわけ,教科や領域の目的の理解のために教師は同はたらきかけるのか,「学び手」と「教え手」の関わり合いの中から「大切なこと」をどう形成していくのかを見ていく研究です。
この領域の最近の仕事
- 南浦涼介・柴田康弘(2015)「『実践者』と『研究者』の協働による学習観を探る実践研究─元生徒との『座談会』の場によってもたらされる可能性」『言語文化教育研究』第15巻, pp.97-117.
- 南浦涼介・柴田康弘(2013)「子どもたちの社会科学習観形成のために教師は何ができるか─ある中学校教師とその卒業生の事例からの探索的研究」『社会科研究』第79巻, pp.25-36.
これまで
1979 鳥取県米子生まれ→島根県松江→兵庫県宝塚→兵庫県猪名川
1998-02 滋賀大学教育学部 学校教育教員養成課程 社会科専修の中の考古学ゼミ(小笠原好彦研究室)。ほぼボート部の毎日
2002-03 ThailandのPhechabun Rajabhat Universityで日本語教師をする (日本語会話・ビジネス日本語・日本語入門など)
2003 帰国後兵庫県伊丹市で中学校の社会科臨時講師,契約切れのちフリーターをする
2003-04 再び渡タイ。ThailandのPhra Nakhon Si Ayutthaya Rajabhat Universityで日本語教師をする(日本語会話・日本語実習 など)
2004-05 滋賀県大津市の小中学校で外国人児童生徒の日本語指導の仕事をする
2005-10 広島大学大学院 教育学研究科 社会認識教育学講座で勉強する(小原友行研究室)
2006-10 大学院生と並行して,附属小学校,農業高校で社会科や図工,理科を教える仕事をする
2010-16 山口大学の教員。教育学部小学校教育コース(現・小学校教育総合選修)及び社会科教育選修 / 大学院 教育学研究科 社会科教育専攻の担当(教科教育法社会,教職概論,地域協働実践,中等公民教育論,教材開発演習など)
2016-23 東京学芸大学の教員。教育学部 国語教育選修 日本語教育コース / 大学院 教職大学院 教科領域指導 国語教育サブプログラムの担当(外国人児童生徒への日本語教育,日本語教育方法論,日本語政策論,異文化間教育,国語科研究 など)
2023- 広島大学の教員。教育学部第一類/大学院人間社会科学研究科 教育科学専攻 教師教育デザイン学プログラム 学習開発学領域の担当(外国人児童・生徒の教育,教育課程論,教育の社会・制度,地域教育実践,外国人児童・生徒の教育課程デザイン特論 など)
免許
- 幼稚園教諭二種免許状
- 小学校教諭一種免許状
- 中学校教諭「社会」一種免許状
- 中学校教諭「社会」専修免許状
- 高等学校教諭「地理歴史」一種免許状
- 高等学校教諭「地理歴史」専修免許状
- 日本語教育能力検定試験合格
構成物
DIY,珈琲,スキューバダイビング,バックパッカー,タイ,ラオス,お絵かき,骨董,廃線・旧道,野宿,地図,コミュニティスペース,小松左京,島田荘司,那須正幹,上野瞭,藤田和日郎,ベルセルク,昴,LOSO,Carabao,Asanee-Wasan,Gary Moore,Yes,など