留学生×学部学生 家から話す学芸大 インタビュー2

聞き手
方繊雪 中国出身。現在東京学芸大学で研究生として勉強している 
細野花莉 東京学芸大学の2年生 
中桐文菜 東京学芸大学の2年生 

日本のアニメで家庭科の授業のシーンがよく見られます。中国には家庭科がないので、「ええ、授業で料理を作ったりお裁縫をしたりして楽しそう」とよく思いました。そんな授業が私たちもあれば良かったなととても憧れています。東京学芸大学で、教育学部で勉強して教員を目指している方が多いので、家庭科に所属している学生にインタビューできたらとても良いと思い、実施しました。 

家庭科は国語や数学のような授業と違って、生活に関わる知識が多いので、家庭科の学生さんたちは普段どのような授業を受けるのか、細野花莉さんと中桐文菜さんもとても興味を持っていたので、家庭科の学生さんにインタビューすることを決めました。 

 今回のインタビュー対象は、細野さんと中桐さんの知り合いの先輩、今中等教育教員養成課程家庭科専攻に所属している小薗美優さんです。料理を作ることが好きだった小薗さんは、高校でケーキを作る授業が楽しいと思って、家庭科を好きになり、家庭科を選んだということです。今年はコロナの影響で、なかなか渡日できなくて、結局母国でオンライン授業という形式で授業を受けました。そのため、残念ながら、インタビューは対面ではなく、ZOOMで実施しました。 

家庭科の先生になるため、勉強をしてみて… 

小薗さんはまず、家庭科を簡単に紹介してくれました。家庭科の授業で、衣生活、食生活、住生活、消費生活など、色々な分野があります。衣生活は、服を着る意義を教える教科で、食生活は、料理を作って食べる意義を考える分野ですあ生活は、快適に過ごすためにどうすればいいのかを学ぶ分野で、消費生活は、環境に配慮して、物を買うことを学んだり、クレジットカードの使い方を学んだりする分野だと語りました。 

また、ゼミは各分野があって分かれていますが、ゼミに入るまではみんな全部広く学ぶという感じであると述べました。 

   家庭科の授業で、学ぶ知識の範囲が広いと感じました。そして、大学で勉強する前とした後での、家庭科に対するイメージの変化はあったかと聞きました。 

小薗さんはこう答えました。 

  「お裁縫と料理を作ることしかイメージしていなかったのですが、住生活や消費生活のような知識を勉強することは知らなかったです。」 

   私たちも家庭科に対するイメージはただ「学校で料理を作る」ことなので、小薗さんの紹介を聞いて驚きました。そして、家庭科の先生になるための勉強の中で、難しいと面白いと思っていることを尋ねました。  

   小薗さんは「家庭科の知識は、文系と理系の知識は半分ずつぐらいで、私は数学と化学が苦手なのですけど、例えば、食品の蛋白質の構造を勉強するとき、化学の知識が必要になる時があるので、それが難しいと思います。そして、家庭科は、一番生活していく中で、直接生かせることを多く学べるので、それがすごく面白いと思います。」と答えました。 

   そして、歴史的な知識も学ぶ必要があるので、文系の知識も結構あると紹介してくれました。授業は面白いが、家庭科の先生になるのは思ったより大変だと感じました。 

   家庭科の授業は生活に関わっているので、他の授業よりだいぶ違うと思います。そのため、家庭科の先生は他の先生と比べて、何か違いや特別なところがあるかを聞いてみました。 

 「直接的に生かしやすいことを教えられるのが特別なところだと思います。例えば、数学だと、計算して意味を感じられない子どもがある程度いると思うのですが、家庭科だと、料理の仕方とか、実際の生活に生かせるので、楽しく学んでもらえるところが特別だと思います。例えば、お米を炊く授業で、中身が見えるようなお鍋を使って、ぷくぷくしている様子を見ることによって、面白いと感じられることが大事だと思いました。」と小薗さんは答えました。 

   

 家庭科は、数学や国語といった他教科とはかけ離れたものであるように感じていました。しかし、小薗さんのお話を聞いてみて、家庭科は、他教科と離れているというよりもむしろ、他教科で学んだことを生活に結び付ける役割を果たしているのではないかと思いました。 

   そして、これからの家庭科について、何か改善すべきところや課題などがあるかを聞いてみました。小薗さんは、家庭科の授業はよくバランスが悪いと言われていることだと答えました。 

   「記憶にあるのは食や衣服などの分野ですが、住居などの分野はあまり扱われていなかったりして、大事にされていないので、分野ごとのバランスがちょっと悪いと思いました。また、住居の分野の中でも、快適に過ごす工夫などは取り上げられるのですけど、防災教育とかの分野はちょっと足りないと思います。」防災教育は確かに重要だと私もそう感じました。命はとても大事なものだし、日本で自然災害が比較的多いので、不可欠だと思いました。 

家庭科の先生になったら…  

   そして、将来のことも少し尋ねました。「家庭科で、生徒に何を教えたいですか。どんなことを伝えたいと思っていますか」という質問を小薗さんに聞きましたが、彼女は、「家庭科の先生として教えたことを全部実行する必要がないと教えたいです」と返事してくれました。なぜかというと、「私は教師として、環境に配慮した消費がいいよとか、快適に住まうためにグリーンカーテンを使うといいよとか、教えなければいけないですが、実際に生活していく中で、経済的な面があって、みんなそういう商品を買えるわけではないし、自分に合わせて選んでいいんだよ、無理しなくてもいいんだよというふうに伝えられたらいいなと思います。」と説明しました。 

そういう考え方は、とても興味深かったとみなそう思いました。「そんなに理想的なことを言っても、全員できるわけではないじゃないですか」と考えている人もたぶんいると思いますいます。授業で勉強した知識は、「絶対にそうしなくてはならない」「これが正しい」というものとして扱うのではなく、より良い生活ができるために「先生に勧められたアドバイス」として扱うという考え方は素晴らしいと思いました。 

   でも、今三年間を勉強してみて、小薗さんは、家庭科の先生になりたい気持ちはちょっと変わったといいます。もともとは、自分が何かできることがあると思って、教育学部に入ったのですが、教育学部に入って勉強してみて、難しいことや自分に向いていないのではないかと思うことが結構増えてきて、そこでちょっと迷っているそうです。「でも、将来もし家庭科の教師にならないとしたら、教育に関わっている仕事をしたいです。」と明るく答えました。 

   初めてそういう気持ちを生み出したのはいつだかと聞いてみると、「大学に入って、子どもと関わるサークルに入っているんですけど、子どもと関わって自分が責任を持っていることにちょっと不安があったときにそう思いました。周りのクラスメイトも、家庭科の教師になるかどうか、迷っている人も結構います。」だそうです。家庭科の道に進めるかどうか、悩んでいる学生が少なくないと分かりました。 

中国には家庭科がないのだ…! 

   日本の家庭科で学ぶ知識は、中国ではほとんど家で親たちが教える、あるいは自分で本やネットの情報を見るという形式で学びます。家庭科に近い授業もありますが、重視されずほとんど国語や数学の授業になりました。日本の学校でわざわざ、家庭科を学ぶ意味はなんだろうとちょっと気になりました。 

 小薗さんは、中国に家庭科がないことにとても驚いたようです。 

彼女は、「例えば、子どもを育てる方法は、家庭によってそれぞれ意見があると思うのですが、家庭科で扱うのは、日本によって認められた結果、根拠があることなので、学校で教える必要があると思います。」と自分の意見を述べました。 

   まさにその通りだと思います。実は、中国で若者の生活力が低いと最近よく言われています。大学に入る前に、勉強に集中しすぎて、家事とかほとんどできない学生も多くおり、私もその中の一人です。私の周りに、ネットを調べながら料理を作ったり、子育てをしたりする若者も少なくない気がします。客観的に、理論的に正しい知識を教えることは必要だと感じました。 

まとめ 

今回のインタビューを通じて、家庭科についての認識は深くなり、家庭科の存在する意味も少しわかってきました。また、家庭科の知識を教えるときに、「無理しなくてもいいよ」という考え方を伝えるのはとても素晴らしいと思いました。家庭科は生活に関する知識を学ぶだけでなく、「可能性を提示する」授業だと感じました。そういう意味では、学校で学ぶことが大事だと考えます。料理を作るとか、自分でも勉強できますが、色々な根拠があることを学び、そして色々な生活スタイルを理解するのは大事だと思いました。