おしごと

こんにちは。広島大学・南浦研究室に関心をもっていただきありがとうございます。このページでは,私のこれまで行ってきた研究を紹介しています。

大きく,次の3つの学問分野を基盤にして研究活動をすすめています。

教育方法学:学校教育におけるカリキュラム・実践・評価を一貫させた視点からペダゴジーを捉える研究。
言語教育学:とくに言語的文化的にマイノリティとなっている外国人児童生徒といわれる子どもたちにに対して,日本語を育み,またルーツとなる言語を継承し,いずれもを活用していく教育List item
教科教育学:教育方法学とも近いものですが,とくに社会科教育・国語科教育を中心に,教育目標ー教育内容ー方法ー評価を一体的に捉えて実践をよりよいものにしていく分野です。

この3つの分野を用いながら,とくに中心的に研究を進めているのは,日本国内の人口減少とグローバル化に伴って顕在化してきた学校内の外国人児童生徒の増加に対応していく教育研究です。

これまで,外国人児童生徒の教育の多くは日本語教育や教育社会学などの観点から,言語支援や子どもたちの関係性(家族など)やキャリアをめぐるケアの問題といった,どちらかというと教育の中でも「福祉的な視点」から検討されていくことが多くありました。

一方で,教育は福祉の視点だけでなく「力の形成」の観点から教師をはじめとする大人社会が意図的に教え伸ばしていくという「育成の視点」が存在します。いわゆる教科における学力形成や,社会に参加していくこと,社会の成員として社会形成の主体者となっていくことはこうした育成の視点にあたります。

しかし,外国につながる子どもたちをめぐるその教育はこれまでこうした育成的視点から捉えられていくことが多いとは言えませんでした。

以下の多くの研究は,外国人児童生徒をめぐって,その子どもの福祉的な視点からの教育だけではなく,主体的な育成の視点を重視しているものです。また,外国人児童生徒だけではなく,そうした子どもも教室の一員として,すべての子どもたちが多様なことばと文化を有する人として,社会参加をしていくためにはどのような教育ができるか,という視点から研究と教育を進めています。

教育と研究の視点

多様なことばと文化を包摂するカリキュラム・授業構築に向けた教育方法研究―外国人児童生徒の十全な参加をめざして

言語的・文化的な背景をふまえた教育目的と内容構成の点から検討しています。

外国人児童生徒が国境を越えた移動を経験することで,本来持っているはずの移動前の社会や文化の視点と,移動後の社会や文化の視点を共に捉えていく実践のありかたを考えています。

この領域の最近の仕事

「社会とつながる評価」としてナラティブを用いる評価研究

「カリキュラム」の観点から考えると,入口は教育目標,過程は授業,出口は教育の評価に当たります。先の「授業のありかた」の研究が入口と過程の研究だとすると,カリキュラムの一貫性の観点から,出口としての評価の研究が必要です。

外国人児童生徒に対する評価と言えば,言語評価によるアセスメントが中心になりますが,言語評価そのものは,子どもたちを教え伸ばしていくという中で子どもたちを捉え,それを指導に生かしたりより大きな成長の手立てにつながっていくことには必ずしもつながらないことが多くあります。

また,具体的な評価も,数値や指標をもとにした評価ではなく,物語(ナラティブ)をもとにした評価の方法を評価原理に立ち返りながら提唱しています。

具体的にはパフォーマンス評価などが持っている教育評価・形成的評価の原点に一度立ち返り,パフォーマンスをルーブリックに落とし込むのではなく,社会に対してなされたパフォーマンスに対して,そのステイクホルダーがその価値を捉え受け止めていく中で,価値の対話が起こる=評価,という視点から研究を行っています。
これは,外国人児童生徒だけでなく,すべての子どもたちが持っている「必ずしも数値や指標では捉えられない学びやパフォーマンス」に価値を当てていくための研究でもあります。

この領域の最近の仕事

「言語的に繊細な感覚をもった教師」を育てる教師教育の研究

上の2つの研究が直接的に子どもたちにかかわる教育そのものを対象にしていたことに対して,こちらは教師に対する働きかけの研究です。

「言語的に繊細な感覚を持った教師」(language responsible teachers)という名称をつけています。

日本の学校の多くの教師が「中流階級の日本人」であることが多いのですが,それは結果的に日本語をネイティブにしていることが多くあります(「ネイティブ」という言い方には近年注意が必要ですが)。しかし,そうしたことから,自分自身の用いる言語の複雑さや権威性に対して無自覚になってしまうこともよく見られます。

教師自身が用いる言語の特質を理解したり,学び手とのコミュニケーションとして用いることばのありかたやパワー,規範のありかたを考えなおしながら実践に取り組んでいける教師を「言語的に繊細な感覚を持った教師」と捉え,そのための教師教育のプログラム開発をめざしています。

この領域の最近の仕事

社会文化的アプローチを用いた,実践の研究方法論

学校現場では伝統的に「授業研究」を行ってきました。ただ,こうした「教師の研究」はいろいろな「お作法」に絡め取られ,当の教師たちにとって,「困ったもの」になりがちです。実践現場から研究を起こすとはどういうことか,どのような視点が必要なのかを検討しています。

この領域の最近の仕事

「学び手」の立場から捉えた学びの履歴としての達成カリキュラムと教師の成長の研究

「どのような目的で,何をどう教えたか」という教師の論理と,「この授業で何を身につけたのか」という学習者の受け止めはズレて当然です。ただ,そこをズレていると言うことで終わるのではなく,学習者は教科や領域の全体的意味をどう読み取り,自己のものにしていくのかの研究です。
とりわけ,教科や領域の目的の理解のために教師は同はたらきかけるのか,「学び手」と「教え手」の関わり合いの中から「大切なこと」をどう形成していくのかを見ていく研究です。

この領域の最近の仕事

これまで

1979 鳥取県米子生まれ→島根県松江→兵庫県宝塚→兵庫県猪名川

1998-02 滋賀大学教育学部 学校教育教員養成課程 社会科専修の中の考古学ゼミ(小笠原好彦研究室)。ほぼボート部の毎日

2002-03 ThailandのPhechabun Rajabhat Universityで日本語教師をする (日本語会話・ビジネス日本語・日本語入門など)

2003 帰国後兵庫県伊丹市で中学校の社会科臨時講師,契約切れのちフリーターをする

2003-04 再び渡タイ。ThailandのPhra Nakhon Si Ayutthaya Rajabhat Universityで日本語教師をする(日本語会話・日本語実習 など)

2004-05 滋賀県大津市の小中学校で外国人児童生徒の日本語指導の仕事をする

2005-10 広島大学大学院 教育学研究科 社会認識教育学講座で勉強する(小原友行研究室)

2006-10 大学院生と並行して,附属小学校,農業高校で社会科や図工,理科を教える仕事をする

2010-16 山口大学の教員。教育学部小学校教育コース(現・小学校教育総合選修)及び社会科教育選修 / 大学院 教育学研究科 社会科教育専攻の担当(教科教育法社会,教職概論,地域協働実践,中等公民教育論,教材開発演習など)

2016-23 東京学芸大学の教員。教育学部 国語教育選修 日本語教育コース / 大学院 教職大学院 教科領域指導 国語教育サブプログラムの担当(外国人児童生徒への日本語教育,日本語教育方法論,日本語政策論,異文化間教育,国語科研究 など)

2023- 広島大学の教員。教育学部第一類/大学院人間社会科学研究科 教育科学専攻 教師教育デザイン学プログラム 学習開発学領域の担当(外国人児童・生徒の教育,教育課程論,教育の社会・制度,地域教育実践,外国人児童・生徒の教育課程デザイン特論 など)

免許
  • 幼稚園教諭二種免許状
  • 小学校教諭一種免許状
  • 中学校教諭「社会」一種免許状
  • 中学校教諭「社会」専修免許状
  • 高等学校教諭「地理歴史」一種免許状
  • 高等学校教諭「地理歴史」専修免許状
  • 日本語教育能力検定試験合格
構成物

DIY,珈琲,スキューバダイビング,バックパッカー,タイ,ラオス,お絵かき,骨董,廃線・旧道,野宿,地図,コミュニティスペース,小松左京,島田荘司,那須正幹,上野瞭,藤田和日郎,ベルセルク,昴,LOSO,Carabao,Asanee-Wasan,Gary Moore,Yes,など