研究室について

研究室は広島大学の次の組織に所属しています。

学部生
教育学部 第一類(学校教育系)初等教育教員養成コース 学習開発学領域

大学院生(大学院博士課程前期・博士課程後期
大学院人間社会科学研究科 教育科学専攻 教師教育デザイン学プログラム 学習開発学領域

この研究室は「教育学」として,教育方法学・外国人児童生徒教育学を中心にした研究室です注)

教育方法学という「一般教育」と,外国人児童生徒教育学という「特殊教育」をどちらも行うという研究室は,日本の中ではほとんどありません。その結果,大学を含む多くの教育の場でこの両者は別々のものとして扱われています。この分断された「一般/特殊」の境界線自体を互いにゆさぶりあい,混ぜあわせ,色々な教師が教え,多様な子どもが学ぶ,まだ見ぬ「多様性の教育学のカタチ」づくりをめざしています。

所属する学生が常にどちらもを行うわけではありません。基本的にテーマは自由です。また,テーマの範囲は広く,地域づくり,学校づくり,授業,評価,教材,環境,教科書,カリキュラム,子どもの成長,教師の成長,また,外国につながる子どもたちの教育をはじめとする多様性の視点もかかわってきます。
学問領域も,教育学だけではなく,社会学,心理学,言語学,文化人類学,哲学……さまざまな部分と横断的に関わった分野です。
そうしたことから,テーマを共有するのではなく,視点の方向性の緩やかな共有として以下を挙げています。

※学外から大学院生を希望される場合は, にてお問い合わせください
※海外の大学から留学を希望される方は,こちら もあわせてご覧ください

注)南浦はこれまで教科教育学(とくに社会科教育)や日本語教育学を中心に仕事をしてきています。ただし,広島大学では左記に特化した専門学科が教育研究組織上別に存在していることや,上のように教えと学び・教育と支援の双方を統合するという積極的な目的意識をこめて,弊学学習開発学領域ではより包括的・中心的なものとして「教育方法学・外国人児童生徒教育学」を看板にしています。

研究室の共通目標

包括的な観点から教育・実践の価値を捉える/つくりだす力を持つ

教育はさまざまな観点から語られることが多いですが,「教育学」として考えるためには,一貫的・包括的に見る目が大切になります。また,教育の営みの中には,学び手に対して何を教えるか/学ぶかを考えるにあたって,常に,価値が入り込んできます。単純に「教育の効果」「学習の効果」と巷で言われるように没価値的に考えることはできないという前提に立って進めていきます。そのため,「どんな価値・目的が重要なのか」「どんな価値がありうるのか」「どんな目的を見すえた上での効果なのか」を,具体的実践とともに検討していくという考え方が重要になります。
こうしたことを念頭において,政策-カリキュラム-授業-評価といったところを一貫的に,包括的に捉えて検討していくことが重要になります。もちろん,研究テーマとしてはそのどこかに力点が置かれるかもしれませんが,常にこれらを分けて捉えるのではなく,つなげて,連動的に捉えて行く視点をつくっていかれることを期待しています。

この視点をもっていれば,大学における仕事はもちろんですが,将来的には学校の内部でも,包括的な視点を持った教員の仕事ができ,カリキュラム・ディベロッパーとして,学校現場のそれぞれの特性に最適化させたカリキュラムや実践,校内研究や評価をリードして進めていく力にもなっていきます。

多様性の教育学を生み出す

私は外国につながる子どもたちをめぐる教育の仕事にかかわっていますが,研究室にかかわる人がみんな同じようにそのテーマを行う必要はありません。が,そうしたことから,対話や研究のアイデアのいろいろなところに多様性×教育学という観点が入り込んでいく姿勢は共有していきたいと思っています。

これまで,多くの場合上の教育政策×教育課程×教育方法×教育評価といった「一般の教育学」と「多様性の教育学」は別々の分野と見なされてくることが多くありました。でもそうではなく,それらがかかわり合っていくことや,混ざることが当たり前という視点を持たないと,「高度な学力保障」といった学力の議論と「福祉・ケアとしての学力保障」の学力の議論は分離して混ざり合わないことになっていきます。それはますます,学校格差を生む温床になるでしょう。力のある学校は往々にそうしたことが混ざり合う場所から生まれてきているのも,事実です。

「おもろい!」×「なるほど!」をかけあわす

「おもろい」は関西弁ですが,単なる面白いではなく,これまでになかった発想,視点を荒削りでも感じられていくことを大切にしたいと思います。そのためには,遊びや趣味の中で培われてきたこと,普段から教育の営みを多様な角度から捉える姿勢,実際の関わりの経験はとても大切です。そうしたことの上にアイデアはあるのだと思います。さらに,幅広い読書を重ねていくことも大切です。

ただ,「おもろい!」は相手があってのものです。そのためには、伝えること,納得を生み出すための論理,ことば,具体,媒体などをうまく組み合わせていきながら表現の力を磨いていくことも重要です。論文を書くということだけでなく――場合によってはラップなんかもあるのかも知れませんし,教師であれば教材で語る・授業で語るというものもありえます――色々な場でふさわしい表現の力を身につけていってもらいたいと思います。

とくに大学院生にとっては下記も。

とくに大学院生(博士課程前期・博士課程後期)では,「教師教育デザイン学プログラム」のポリシーには「①教育システムの改革を支援するイノベーター(innovator)」と,「②教育システムを実質的に機能させている教師を育てる専門職(mentor / coach)」が挙げられています。ぜひ,研究活動を通して自分なりの模索をしてみるといいと思います。

①や②が身についていくことは,将来においてかかわる教育の現場(いわゆる就学前の現場,小中高の現場,行政の現場,大学の現場,NPOや地域,民間の現場,あらゆるものがあります)の中で今後必要になっていく力につながっていきます。例えば,学校現場で苦手とされがちな「カリキュラム・ディベロッパーとしての力」,「校内研究を推進していく力」,「多様な子どもたちを包摂した教育カリキュラムをつくる力」などは,学校の内部から生み出されていくものですが,高度な視点が必要になります。こうした力の育成にもつながっていきます。

また,とりわけ,外国につながる子どもたちなどをテーマにする場合,分野が横断的学際的な領域になります。そのため,大学内・大学外にある多様な教育や研究の分野と自分自身がかかわり合って学びを深めていくことをお勧めします。
博士課程後期になれば,横断的領域に挑戦する場合,戦略的な研究業績の蓄積も重要です。例えば,カリキュラム研究,教育方法学,教科教育学といった学校のペダゴジーにかかわる分野と,異文化間教育や日本語教育,特別支援教育など,特定の子どもたちの支援にかかわる分野など複数の分野を見すえることなども重要です。


研究室に関わった先輩の卒業論文・修士論文

2023年度以降は広島大学教育学部/大学院人間社会科学研究科(学習開発)の教育方法学・外国人児童生徒教育学研究室です

2016-2022年度は東京学芸大学教育学部(A・B類国語教育教室 日本語教育コース)の研究室です

2010-2015年度は,山口大学教育学部(小学校総合教育コースおよび社会科教育選修)所属の研究室です(研究室所属学生は2012年度から)

2023年度

  • 外国人児童の在籍学級受け入れに関する教師の意識
    keyword: 在籍学級の教師,日本語教育の非専門性,学校教師の専門性
  • JSL高校生の英語学習における複数言語の活用―社会的公正の観点から―
    keyword: 社会的公正,複数言語使用,英語学習,フィールドワーク
  • 地域日本語教室が生み出す学習者と地域の接続―福島県でのフィールドワークからみるシティズンシップ
    keyword: 地域日本語教育,シティズンシップ,プロジェクト,フィールドワーク
  • 外国人児童生徒の思考を促すための教育アプローチ―タキソノミーテーブルにもとづいた実践の分析から―
    keyword: JSLカリキュラム,思考,ブルーム・タキソノミー,ドキュメント分析

2022年度の3年生は,10名で国語教育2名,日本語教育8名で多様なテーマを行っていました。
南浦の大学移動にともなって,4年次はそれぞれ異なる研究室に再配属されています。
22年度の元気な学習の記録は下のリンク「2022年度春学期ゼミ日誌」から懐かしむことができます~。


2022年度

  • ジャンル理論をふまえた学校教育における「書くこと」の研究
    keyword: 読書感想文,ジャンル,作文,書くこと
  • 吃音がある子どもを包摂する国語教育
    keyword: 吃音,障害の社会モデル,セルフスタディ
  • 日本語学習者の役割語の利用―スタイルシフトの利用を中心に
    Keyword:キャラ語・役割語,待遇表現,留学生,スタイルシフト など
  • 大学入試改革─高校教育と教育産業の接続─
    keyword: 大学入試,予備校,教育の商品化
  • 小学校における読書活動と環境
    keyrword: 学級文庫,読書活動,学習環境設計,小学校 など
  • 国語科自主ゼミの活動が学生の教職意識に与える影響
    keyword: 自主ゼミ,教師教育,教職意識
  • 教育格差の是正に向けた公立小学校のとりくみ
    keyword: 教育格差,デモグラティックスクール,力のある学校

2021年度

  • 日本語教育におけるTRPGのゲーム教材としての分析
    Keyword:TPRG,アクションリサーチ,ゲーム開発,外国人児童 など
  • マルチモーダルを活かした言葉の教育の教材分析──多言語環境におけるインクルーシブな教育の実現を目指して
    Keyword: 国語科教育と日本語教育の融合,トランスランゲージング,マルチモーダル など

2020年度

  • 帰国児童に対する国際学級国語科実践のアクション・リサーチ研究―新任教師のフレームの変容過程に着目して〈修士論文〉
    Keyword: 国語科教育と日本語教育の融合,複言語主義,トランスランゲージング,アクション・リサーチ など
  • 学習者の自律性を育む日本語教育―学習者へのインタビューから見えた学習環境と自律性の関係
    Keyword: 国語科教育と日本語教育の融合,複言語主義,トランスランゲージング,アクション・リサーチ など
  • 現代日本における母語話者の日本語に対する規範意識に関する研究―小学校国語教科書・児童用日本語教科書・小学校書写教科書における「文字を書くこと」についての指導の規範
    Keyword: 文字指導,母語の規範意識,批判的談話分析 など

2019年度

  • 在籍学級における外国人児童の学びの保障
    Keyword: インクルーシブ、在籍学級の学び,フィールドワーク など
  • 日本語教育のマネジメント研究
    Keyword: 食べていける日本語教育、組織作り、文献調査 など
  • 海外の日本語教育機関におけるカリキュラム開発
    Keyword:継承語、アメリカ補習授業校、実施したカリキュラム、インタビュー など
  • 第二言語による学習参加のための教育ツールの開発
    Keyword: ゲーム開発,コミュニケーション、学習参加 など

2018年度

  • 多様な日本語教育現場の状況を踏まえた教師の実践構築プロセスの研究─教師へのインタビューを通して〈修士論文〉
    Keyword: 教授法の創造、ポストメソッド,教育観,内容と言語の統合 など
  • 外国人児童生徒に対する評価方法の研究─高校教員の評価に関する工夫と葛藤を視点として
    Keyword: 高等学校、外国人児童生徒、評価、評価観 など
  • 日本語教育の教室における使用言語と学習の公正性―都議会言説と自治体の教材の関連性を手掛かりに
    Keyword: 東京都議会,自治体教材,言説 など
  • 地方在住の日本語学習者の言語獲得意識―大阪から東京に移動したタイ人留学生の語りを通して
    Keyword: 方言、日本語学習者、関西方言 など
  • 聞く力の軽視 聞く力を伸ばす実践とは
    Keyword: 国語科教育、聞く力、教室実践 など
  • 人口減少時代における外国人材のための日本語教育
    Keyword: 日本語学校経営、人口減少社会、地域共生、PBL など

2017年度

  • 日本語教育における「教師の教室内発話」の意識についての研究―「ティーチャー・トーク」をオルタナティブに拓く〈修士論文〉
    Keyword: ティーチャー・トーク言説、教師の教室内発話,教育価値観,教師教育 など
  • 日本への移動経験者とその周りの子どもたちとの関係構築過程の研究
    Keyword: 移動経験者と周りの子どもの関係構築,ライフストーリー,TEA など
  • 学校における言語景観―提示の方法とメッセージ性の分析
    Keyword: 学校言語景観,質的分析,環境の打破 など
  • 生涯教育としての日本語教育のあり方について―フィリピンでの実践的研究を視点に
    Keyword:海外の子どもたち,日本に行く/日本人と話すではない日本語教育,実践分析 など

2016年度

  • 小学校社会科における「対話」の再考―教師-子どもの権威関係に注目して〈修士論文〉
    (南浦異動のため2015年度まで)Keyword: 対話、ワーチ、権威関係、歴史学習 など
  • 学校教育と複言語複文化的視点
    (南浦異動のため2015年度まで) Keyword: 複言語主義,外国人児童生徒,学校教育

2015年度

  • 特別支援教育における「福祉」の視点の可能性
    Keyword: 包括的ケア、分析的ケア など
  • 小学校教員の成長に資する「理論」の捉え方の研究
    Keyword: 理論と実践、実践の中の理論 など

2014年度

  • 省察と成長の循環―「あの関わり」の捉え方の変化を通して
    Keyword: 省察の意味,社会的状況との関わり,教師の成長 など
  • ダイアローグによる歴史学習の基礎的研究―オーラル・ヒストリーを視点に
    Keyword: ダイアローグ,オーラル・ヒストリー,歴史学習 など
  • 外国人児童をどのように支えるか―「つながりの支援」から「つながりの実践」へ
    keywords: 外国人児童生徒,日本語教育 など
  • 先の見えない社会におけるキャリア教育―「ワーク」から「ライフ」へ
    keywords: 異年齢集団(中学生と大学生or大人),キャリア形成促進,コミュニティ・スクール など
  • 学校を超えて生かせる力の育成としての隠れたカリキュラム―小学校教育コースの分析から
    keywords: 意図的な隠れたカリキュラム,活用力,教師の手立て など
  • 道具としての黒板の活用―子どもの主体的な学びのために
    keywords: 対話型黒板,機能,教師の授業観と黒板観 など

2013年度

  • 授業における小中連携を探る研究
    Keyword: 小中連携,社会科 など
  • 授業内における教師の指導・支援の意図―「現場経験が子どもを見る目を作る」を越えて
    Keyword: 教師の意図,子どもへの対応,チューターの意味 など
  • 中学校社会科教師のライフストーリー研究―大学卒業後の教師の成長に注目して
    keywords: 教師の成長,社会科教育観,ライフストーリー など
  • 外国にルーツを持つ子どもに日本の学校教育が与える影響
    keywords: マイノリティ,多文化教育 など
  • 学習指導における小学校教員の専門性についての探索的研究
    keywords: 小学校教員の学習指導の専門性,教科内容≠教育内容 など

2012年度

  • 「教師と子どもの思い」から授業の横断的目標を見つける研究―小学校の特別支援教育を中心にKeyword: 教師の実際カリキュラム,横断的目標,特別支援教育
  • 学習指導における「学び合い」の研究
    Keyword: 学び合い,アクションリサーチ