(元ツイートはこちら。整理しました。)
外国人児童生徒教育で博士課程(後期)を考えている人に。雑多に書いた私見の10のこと。(私見です)
とってもニッチなのだけど、ニッチゆえに必要な人には必要な視点。
ちょうど先日,学会で同僚や院生たちと話していたことをふまえて。
院にいくなら,どこであれ、しあわせに研究を続けていける人になってほしいなと思います。
博士課程(後期)は,「博士号を取る」こともさることながら,「持続可能に研究を進めていくことができる力を身につける」
という「文化資本(知的な探究性)」「社会関係資本(つながり・関係性)」「経済資本(職業獲得性)」と緩やかに結びついた3つの視点はとても重要になってくるように思います。このあたりをふまえながらメモとして書いています。
①博士を取った後,どのような仕事をするかで戦略的に論文掲載誌をえらぶ。 「外国人児童生徒教育」という学問分野は今のところ存在しません。なので「大学職」を狙うなら「何の学問分野で活躍するか」を考える必要があります。
②2系統の学会に参加する。もしも「学校教育」×「外国人児童生徒の教育」なら,学会は「学校教育系の学会」と「外国人児童生徒の教育系の学会」の双方で論文を書く,発表をする,関係を作る,があるといいように思います。2本柱は大事。 「外国人児童生徒の教育はみんなあの学会だからあの学会」発想は,関係性はできますが,似たような研究や発想・感覚に埋没しがちになるリスクも大きく,それのみにならないことも重要です。
③単に外国人児童生徒の教育だけではなく,その学会の本筋や原理に関わるところにつなげて論文を書く。 例えば「教育方法学」と「日本語教育」や,「教科教育学」と「異文化間教育学」などの双方に論文誌を出す(学際的な学会はポストに遠いので,背後にある学問分野でも出す)。その上で,背後の学問分野に「外国人児童生徒の教育」の角度から穴を穿つ,例えば将来的にはその分野の学問分野のハンドブックの1章になるように絡みつけていくことは重要です。
④学内や学外の人と一緒に共同研究をする。これは査読誌じゃなくてもいいので年1本は論文をにする。これで分野2本柱で博士号までに査読2,3本,紀要3本で計6本あると公募も出しやすいです。 「学問分野」の柱があると,公募も強みになっていくでしょう。2柱あるとさらに強いです。
⑤教育経験も重要。大学の非常勤もいいし,教育学系の場合は初等中等教育の経験も強いです。特に教育学部の場合は「学校現場経験」を色々な形で積んでおき「先生の気持ち」を考えられるようになることは大切です。
⑥女性の場合とくに,ライフキャリアの道筋を見すえることも現時点の日本社会では重要です。そうしたことに理解のある指導教員や相談できる教員,モデルとなりうる教員とのつながりを作っておくことも大切です。 大学の女性支援システムの有無も重要で,そうしたことを通して,視点を得て制度を活用していくことができるといいなと思います。
⑦⑥に関連して学問分野によってはまだまだ男尊女卑の文化も根強いことがあります。業績になることをちらつかせ,下請けばかりになりがちな師弟関係や上下関係を作る形で共同研究に誘う人には注意する必要があります(まれにそうしたことはあります)。それよりは⑨⑩のような良質な研究仲間をつくっていくことが重要です。
⑧持続可能な楽しさを培ってくれる場であるかどうか。タイプや分野にもよるけれど,研究論文1本1本の厳密な完成度にこだわる研究指導の場合,その重要性もある一方で,エネルギー切れを起こすリスクもあります(ただこれは,その当該の分野がそうした学問基盤の特徴をもっていることも大きい→だからこそ,③④のような二本柱は余計に重要になる)。大事なのは「ずっと研究をしたいと思える持続可能な楽しさを培ってくれる場」の存在。 「大きなことを見すえ,人と楽しく研究が出来る」は大事です。教育も大事です。
⑨学内に他分野も含めて研究の横のつながりをつくること,大切です。そのために色々な授業を受けられる仕組みになっているかもけっこう重要ですね。
⑩研究のネットワークをつくる。学会にいって,発表をして,学外の仲間や先生とのつながりをつくり,いろいろな「研究ネットワーク」をつくる。それが上のいろいろなところにかさなっていきます。
⑪人生の中で探求し,世界をちょっとだけいいものにしていくための,自然体でしたたかな自分でいられますように。