日本語政策論アーカイブ

2016年~2022年に東京学芸大学で行っていた「日本語政策論」の授業をもとに,資料と展開をアーカイブ化したものです

授業の目的

  • 言語教育の外側に埋め込まれている「社会的視点・制度的視点」を捉えることができる。
  • 社会的状況の中で個々の人間が持つべき言語の権利のあり方を考えることができる。
  • 日本語のあり方やその教育の将来像を制度的な視点から捉えることができる。

「政策!? なんだか難しそう」という声が聞こえてきそうな授業名ですね。
「教育者になる」ことと「政策」とはいったいどういう関係にあるのでしょう。単に「政策」を知るだけではもったいない! むしろその実践が行われるのはなぜなのか。その背景にどのような政策的観点があるからなのか。
という「実践に込められている政策的観点は何かを考える」。そんな目を持てることがとても大事です。

たしかに,教師は直接的に「政策」を変える立場ではありません。
政策は時代や状況の中で「変わる」もの。
状況に応じてみなさんが「変えていこう」とするもの。でも,教師の仕事として考えるなら,どうするか。政策そのものに提言をしていくのではなく,「自分の実践」の中に「よりよい観点」としてどのような観点を込めていくか――そんな視点が重要になってきます。

これは「国語教育」にしても「日本語教育」にしても,はたまた「英語教育」にしても同じです。「学校」という場の中の教育として,どのような言語的文化的政策観点が今存在しているのか。今後の子どもたちの成長を考えたとき,さらにどのような観点を込めていく必要があるのか――それを考えていく授業です。

授業の構成

この授業は下にあるように「4つの単元」に分かれています。
まず第1単元で「現代の日本語教育をめぐる論点争点」が提示されます。受講生はこの「論点争点」に対する解を求められます
この解を深めていくために,第2単元で「歴史」から解を考えます。さらに第3単元で「海外」から解を考えていきます。
最後に,これまでの学びをふまえて,最後に戻ります。
第1単元で提示された「論点争点」に対して解をレポートするのがゴールです。


授業の展開

各授業のサムネイル画像を押すと,スライド資料が見られます


第1単元―全体を貫いて考える「論点争点」を提示する

最終レポートはこの「論点争点」に対する自分の解を書く
そのために,第2単元以降を学んで,レポートのための視点を深める

第1回 オリエンテーション

第2単元―「論点争点」に対する解を「歴史」から考える

第1回 10/19 オリエンテーション
第2回 10/26 現代の日本語教育をめぐる論点争点1
人口減少社会における共同体と日本人
私たちは外国から来た人を「同じ○○人」と認めることはできるか?
第3回 11/9 現代の日本語教育をめぐる論点争点2
「やさしい日本語」と日本語の規範
私たちは「日本語の規範」にどれだけ寛容になれるか?
第4回 11/16 現代の日本語教育をめぐる論点争点3
日本語教育は「語学教育」という枠を超えて
どのような教育ができるか?

「日本語教育史」から考える

第5回 11/23 明治の言語政策1―「国語」の誕生
明治期の言語政策と標準語
スライド資料
第6回 11/30 明治の言語政策2―「標準語」の誕生
「一つの国家,一つの言語」の統一と分断
第7回 12/7 戦争と言語政策1―植民地と日本語教育1
日本語教師は同化政策の先鋭だったのか文化交流の旗手だったのか?
第8回 12/14 戦争と言語政策2―植民地と日本語教育2
政策と現場の間で教師はいかに葛藤するのか?
第9回 12/21 戦後と言語政策―近代から学ぶこと
戦後の日本語教育は戦前と分かたれているのか?

第3単元―「論点争点」に対する解を「海外」から考える

「複言語主義」から考える

第10回 12/28 複数言語を話す人たちの世界を知る
複数言語話者へのインタビュー
第11回 1/4 複数言語話者のライフストーリー
複数言語話者へのライフストーリーを読み,共通点を考える
第12回 1/18 私の複言語性と複言語主義
自分自身の複言語性を検討し,概念化する

第13回 1/25 能力としての複言語主義と実践
「能力としての複言語主義」と言語教育実践を検討する
第14回 2/2 価値としての複言語主義と総括

総括―「論点争点」に対する解を再び考える

第15回 2/9 改めて,「論点争点」に解をつくる
「論点争点」を改めて検討する
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