研究室の立ち位置:ケア×卓越性の両輪の学校・実践をめざして
本研究室は、カリキュラム・授業・評価・学校づくりを、教育方法学を中心にした枠組みで研究します。
現代の教育改革において、コンピテンシー(資質・能力)や到達目標、目標に基づく評価は、政策・学校実践・研究の共通言語として重要な位置を占めています。
その重要性を正面から受け止めたうえで、本研究室は、それらの枠組みだけでは捉えきれない「人格形成の視点からの学び」「ケアと卓越の両立」「線形ではない授業の生成」「共同体が価値を実現する評価」の可能性も視野に入れて研究を掘り下げていきます。教育学の世界的共通言語を手放すのではなく、学びの現実に即して射程を拡張し,新たに教育学の世界が多様な人びとに届くようにしていくことが、本研究室の立ち位置です。
また,第一類学習開発学領域教育学系として存在しているため,研究室の横の往還の中で,教育史,教育経営学,心理学,各教科教育学との関わりの目線も有しながら深めていくことができます。同時に,第五類教育学プログラムの教育方法学教室との交流の中で協働的な学習も進めています。
研究室における教育学としての視点
A コンピテンシーとビルドゥング
近年世界でも日本でも重視されるコンピテンシー(資質・能力)は、学びを社会的に説明し、教育の方向性をさまざまな関係者と共有するために強みを持つ重要な概念です。
一方で、学びをすべからく能力や資質といった「チカラ」として,その「獲得」や「到達」としてのみ捉えると,学び手が世界と自分の関係を結ぶさまざまな過程(ビルドゥング:意味の生成、自己形成、価値の立ち上がり)への目線が希薄になったり,「チカラ」の目標からこぼれおちる子どもたちが持つ考えの意味や価値への目配りが薄くなってしまう落とし穴もあります。
そこで,南浦研究室では、コンピテンシーの有益さを理解しながらも,ビルドゥングの観点も視野に入れ、学びの過程・意味・関係性を理論化し、カリキュラムや授業、評価の論と実際に還元していきたいと考えています。
B ケアと高度な学力形成の両輪
高度な学力形成は,学習の質を高め,可能性を広げる点で重要です。
一方で,学校がそうした卓越性のみを唯一の目標としていくと,こぼれ落ちが「個人の不足・欠損」として捉えられやすくなり,多様な学び手の学習参加や安心といった基盤が脆弱になります。
南浦研究室では,ケア(参加・安心・関係性の基盤づくり)と,高度な学力形成を二項対立にせず,両輪として捉えて進めていくための学校づくりや授業づくりの原理を検討しています。
C 生態学的な視点からのアプローチ
授業やカリキュラムの基本は「目標にどう迫ったか」という目標-評価の一体化です。これによって授業や学校のカリキュラムは見通しを持つことができ,同時に学習の説明可能性を高めていきます。
一方で,教室や学校では,教材や道具,場や人や時間が相互に影響しあい,実際には実践は一直線に進んでいかないことも多くあります。OECDのラーニングコンパスでも「生態学的な視点」としてこうした点が示唆されています。
南浦研究室では,授業を目標-評価として設計できる視点を養うと同時に,生態系として捉える視点も重視し,学びが場の中でいかに生成されていくのかを授業研究として捉え,それを見る視座も磨くことを重視しています。
D ナラティブと共同体の価値実現
学校と教室の営みを,達成の状況の可視化としてPDCAを回していくことは,説明責任を果たす上で重要です。
一方で,学校の営みはそれのみではなく,何を価値として,どのようにそれを関係者で共有し継承していくかという点も重要で,この視点はPDCA的な視点だけでは捉えにくいところです。
南浦研究室では,こうした視点から,教室や教育組織の価値を数値化指標化するのみではなく,価値実現のナラティブとして捉え,その点から実践と評価の役割を再検討しています。
教育学的な問いによって得られる視点とは?
上のような教育学研究は,それを通して,次のような視点を身につけることができるようになるでしょう
- 多様な学校状況(子どもの多様性,地域の多様性,教師の多様性,環境の多様性)をふまえて,学校づくりや実践を設計していくことができる。
- 実践を目標到達性の視点のみならず,その場で生まれる子どもたちと教師の相互作用の中から,価値を見出し,それを大切にしながら実践を進めていくことができる。
- 教室や学校の出来事を記述し,概念へ引き上げることができる(生態学的,状況的記述から理論をつくる)
- 複数のアクター(子ども,教師,支援者,行政,制度,教材など)の相互作用を捉えることができる。
- 「測りすぎ」の時代において評価を倫理的かつ道具的に積極的に活用することができる。
そうしたことをふまえて,南浦研究室では研究室が運営されています。全体としてのゴールは以下をご覧ください
またこうした視点は「多様性の教育学」と接点がつよくあり,そうした多様性の視点は教育学の理論的視座を鍛えていくことにもつながります。この視点をより参考にしたい場合は下記も合わせてご覧ください。



