▲授業で最終的に作成したリーフレットです。画面を押すとEPUB(電子書籍)で開きます
授業の全体像:どんな人が学ぶ? 何を学ぶ?
この授業は,主として広島大学大学院人間社会科学研究科 教育科学専攻 教師教育デザイン学プログラム(学習開発学領域)を中心とした大学院生に向けて開講された授業です。
いわゆる日本語教育学や教育c年蓄積されてきた分野ですが,教師教育デザイン学プログラムの開講科目ということもあり,それをふまえてメインストリームの教師が外国人児童生徒を包摂した教育をする視点をつくっていくことを念頭に置いて授業を進めていきます。
2023年のセメスター1,ターム2の授業です。ターム2が始まってから更新されていきます。
メインストリーム(クラスの担任,教科の担任として何ができるか,言語的文化的に多様な子どもたちを包める教師として何ができるかを考えます。海外の文献を中心に検討していきながら,日本の教育への再文脈化をはかっていきます。
外国人児童生徒教育×インクルーシブ×教師教育という,「多様性の教育学」を考えていくことができるという点で,日本でも数少ない授業です
授業のメインテーマ
目的
- 言語的文化的に多様な子どもたちの存在をふまえ,その教育課題や可能性を理論的に捉えることができる。海外文献・国内文献をふまえながらその視点を具体的なケースや事例と結びつけて理解できる
- 「教師の指導場面における価値判断」を軸に,複数の考え方の双方の価値を捉えながら具体的な対応のありかたを考えることができる。
- アカデミックな視点の発信や表現のありかたを「論文」とは異なるジャンル(表現媒体と表現文体)によって,教師や支援者を想定した表現で成果を発することで社会貢献,社会表現として進めることができる。
基本コンセプト
第1段階
外国人児童生徒等教育の教員研修はどのような全体像なのかを分析する
第2段階
海外のELL教育の研究ハンドブックを手がかりにして,言語的文化的に多様な子どもたちを包摂する教育の動向を読み取る,その上で日本の現状を考えたときにそこにどのような論点争点が浮かび上がるかを検討する
第3段階
将来の同僚の先生の困り感を想定しながら,「言語的文化的に多様な子どもたちも包む教育をどうする? 検討の視点リーフレット」を作成する
1. 「こうしたらいい」ではなく「AとBとどちらだろう?」で捉えるものを考える
- 外国人児童生徒の対応を「こうしたらいい」というものではなく「Aという方向性とBという方向性のどれを取る? そこにはどのような意味や価値があり,どのような難題もある?」ということを提起する形を取る。
- 「答えを与える動画」ではなく「異なる複数の価値の視点から異なる対応のありかたを知るもの」として考える。教師が状況に応じて選択したり,あるいは今は取れないもう一方の選択肢の方を取れるように状況を作り変えていくことにつなげる。
- 「カリキュラム」は具体的な設計のことだけではなく,教師の判断の瞬間の中に「カリキュラム的な目線」は入り込んでいる。その判断を支える視点づくりを行う。
2. 構成はいろいろあっていいけれど,対立的な価値について双方の視点を描くこと,解決の提案を少しだけは示してみること
- 具体的なケースとしての事実提示
- その事実の対応の方法としての2つの方向性の提示
- 2つの方向性のメリットとデメリットの提示
- 小さな解決アイデアの提示
3. 「同僚の先生が見てなるほどと思えるもの」にするには,をふまえる。アカデミックなことをアカデミックに語るのではないチャンネルで「発信」することを大切にする
深掘りのための文献
**日本の外国人児童生徒教育を一端外から眺め,海外の動向や取り組みの論点と照らし合わせることで日本の現状を対象化することと,論点を見つけ出すために海外の動向をまとめた研究ハンドブックを読みます。
目次
- Teaching for Diversity Online: A Teacher Educator’s Perspective
オンライン上におけるダイバシティの教育─教師教育者の見方 - Preparing Teachers to Effectively Engage With Young English Language Learners and Immigrant Families
言語学習者の子どもたちとその家族によりよくはたらきかけるための心構え - A Primer on the Individuals With Disabilities Education Improvement Act and Advocacy for Students Who Are Culturally and Linguistically Diverse
障害を持つ子どもの教育の改善に関する法と言語的文化的に多様な子どもたちを支えていくこと - Roadblocks to Bilingualism
バイリンガリズムに向かうための障壁 - Resource vs Deficit Views About English Language Learners in Classroom Practice
授業実践における言語学習者に対する資源的な捉え方と欠落的な捉え方 - The Relationship Between Oral Language and Reading in EnglishOnly Proficient Bilingual and Emergent Bilingual Adolescents
英語のみに熟達するバイリンガルと母語を学びながら新たな言語を学ぶバイリンガルの子どもたちの口頭言語と読書の関係性 - Recognizing the Realities and Needs of Unaccompanied Minors in the AllEnglish Classroom
オールイングリッシュな教室における同伴者のいない子どもの現実とニーズの捉え方 - Asian Immigrant Communities Civic Participation in Cultivating Bilingualism and Biliteracy in the United States
アメリカのアジア系移民のコミュニティの中でバイリンガリズムとバイリテラシーを育みながら市民参加をめざすこと - Understanding Diverse Bilingual Learners
多様なバイリンガルの子どもたちを理解する - Transcending the Challenge at the Library: Disrupting Deficit Perspectives About Latinx
図書館で課題を越えていく─ラティーノに対する欠落的な捉え方をゆさぶる - Myth Busting: Low-Income Latinx Immigrant Parental Involvement
神話を打ち砕く─ 神話をウ地区だs区 - Working With Immigrant Children in Schools: Practical Skills for Teachers
学校における移民の子どもたちとともにはたらく─教師の実践スキル - Supporting Immigrant Children in College and Career Readiness
移民の子どもたちが進学およびキャリアをえがくことの支援 - Cultivating Rich Language Development Deep Learning and Joyful Classrooms for English Learners
豊かな言語発達を育む─英語学習者の深い学びと喜びの教室 - The Language Use of a Bilingual Korean Teacher and Bilingual Korean Students in a Korean Heritage Classroom
韓国語母語教室における韓国語教師と韓国語の子どもの言語使用状況 - Magnifying English Language Learners Success Through Culturally Relevant Teaching and Learning Frameworks
文化的な関係性のある教育・学習の枠組みの中での英語学習者の成功を高めていく - Humanizing and Linguistically Responsive Pedagogy
人間的であり,言語的であることに応える教育のありかた - Preparing InService Teachers to Work With Linguistically and Culturally Diverse Youth
言語的文化的に多様な子どもたちとともにある教員養成 - Refugee Parents Perceptions of Bullying Practices of Their Children in Urban Schools
都市部の学校における難民の保護者による子どものいじめの実態に関する認識 - Educating Refugees: The Role of Non-Profit Organizations
難民の教育: NPOの役割
文献解題の薦め方
①日本の状況にも関わっていく下記の章からピックアップする
- 二つの言葉を使用していくことの捉え方 4,6,7,8,9,
- 子ども自体の捉え方 5,10,
- 授業のありかたに関すること 5,14,17
- 社会参加や将来設計に対すること 13
- 教師教育をしていくことの視点 1,18
- 家族へのはたらきかけ 2,19
②発表時は以下の観点でまとめる PPTでも論文レジュメでも(30分)
- a. 上の文献の章を要約する 翻訳機の使用はOK(全員目を通しておくこと)筆者の紹介→章の全体構成→各章の要約
- b. 子どもたちの抱える状況の中で,どのような論点争点があるのかを提示する
- c. 日本においてそうした論点争点はどのように存在するかを考える
③ ②の発表のa〜cについて,全体で議論する(50分)
アーカイブ 第2部 文献解題
おねがい
この資料は,広島大学大学院 人間社会科学研究科 2023年度 2ターム「外国人児童・生徒の教育課程デザイン特論」(南浦涼介担当)の授業で行ったが受講大学院生たちの発表資料です。
Grace Onchwari, Jared Keengwe (2019). Handbook of Research on Engaging Immigrant Families and Promoting Academic Success for English Language Learners , IGI GLOBAL の研究ハンドブックのいくつかの章を選んで発表したものです。
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